Between Isekai and Slice of Life 〜異世界と日常の間に〜 | Miho Hatori
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Cibo Mattoとしてインターナショナルに活躍し、その後もNYを拠点に活動を続けるMiho Hatori。本作は劇的な変化を遂げつつある世界とアイデンティティの現在を見つめた思索とインスピレーションに溢れた作品になっているという。 このアルバムは、Isekai系とSlice Of Life系というアニメのジャンルにインスパイアされた世界観でキュレーションしたアルバムです。日常系は英語でSlice of life(日常の何気ない一幕)と言いますが、この言葉はいかにも英語のおもしろさがある表現だと思いました。 私はこの二つの言葉に、非常にインパイアされたのです。この二つの言葉から発生した、そして、その間“Between”に存在するメタフィジカルな世界観をアルバムとして、表現したかったのです。この場所は、私が自分のキャリア、人生でずっと探していた位置なのかなと思います。
事の経緯は、私が住んでいるニューヨークが、2020年の3月からロックダウンになり、私はこの機会を利用して、アニメを思う存分に観ました。世界中でパンデミック、アメリカでは、意識の違った人々が政治的にも二分化したり、BLMなどの運動も盛んになりました。色んな事柄が浮き彫りになった現在、今までのシステム、居場所に、疑問を持つ人は沢山います。人々が、アイデンティティーについて、いままで以上に考えざるを得ない時代になりましたが、これから先がどうなるかも解らない状態の中で、私の心を癒してくれたのは、アニメでした。
私には、アニメは優れたストーリーテリングの方法として、学ぶものが沢山あり、改めてアニメの中の日本人的な発想の自由さを新鮮に感じたと同時に、自分の中に眠っていたアニメオタク的な性質も開花して、アニメの技術的な要素、デフォルメされた顔、身体の動き、感情の表現に、私は非常に関心を持ちました。それは、音楽の例えにすると、メロディーや音を構成するのと、似ている感覚が私の頭の中にあり、非常にインスパイアされたのです。 私がこのアルバムで表現したかった立ち位置、そして自分の居場所という意味で用いた前置詞“Between”ですが、その理由は、カリブ海、マルティニーク島出身の詩人、思想家エドアール・グリッサンの影響が大きいです。彼はクレオール性という言葉を使って、カリブ海の人々の生きる術、思想を独自の言い回しで語ってくれていますが、私にとってこのクレオール性は、いままでの自分から自由になる見方であり、そして自己のクレオール化を、故郷の日本で著しく発達したアニメというストーリーテリングが、私に色々とヒントをくれたのです。 カリブ海の人たちが、奴隷制度や植民地化から諦めずに、自分たちのアイデンティティーをちゃんとクレオール語という言語として再構築したように、私たちも、何かできるはずです。というのは、日本人は実はそうやって、再構築してきた(やまとことばと漢字を使っています)のだと思います。そういった脳の回路、感性がアニメなどの優れたストーリーテリングの表現方法に生かされているようにみえてなりません。
グリッサンは、言っています。
“われわれの疎外の隠されたメカニズムを意識の太陽にさらすことによって、われわれの存在を浄化しつつ、われわれの存在を分解すること。自らの特異性の内深くへ進入し、未来へ向けて備給し、心底われわれの姿に戻ること”
加えて、
“それはアイデンティティが必ずしも根ばかりにあるのではなく、「関係」にもある”
私には、このアイデンティティを、関係性というところから見た視点は、4Gから5Gになるみたいな、新しい概念で、とても面白いと思ったのです。その関係性にちなんで、Between Isekai and Slice Of Lifeとアルバムを名付けてみました。この複雑であり、不透明な時代に、意識の太陽に当たれるようにと祈りをこめて。
Release Date:2021.01.22 (Fri.) https://www.youtube.com/watch?v=Ofslt-o3K-8
https://www.youtube.com/watch?v=y0uRdcr3ec8&feature=emb_title
変、かっこいいyuta25.icon